レポート

Case06株式会社サイレントボイス・ NPO法人サイレントボイス

行政の福祉化を進めるにあたっては、障がい者や一人親やホームレスといった一般企業では雇用されにくい人たちの働く場をつくる視点が大切になってきます。営利だけを目的とするのでもなく、福祉的就労(就労継続支援A型・B型事業所、地域活動支援センターなど)でもない「中間的な職場=ソーシャルファーム」が注目されています。ここではさまざまなソーシャルファームの取り組みをレポートします。

 サイレントボイスは2014年に設立されました。聴者(聞こえる人)と聴覚障がい者の働きやすい職場を作り出す株式会社と、聴覚障がいのある子ども向けに教育を行うNPO法人の2つの組織からなります。

 株式会社サイレントボイスの活動については、聴覚障がい者の聴者と異なるコミュニケーション感覚を生かした体験型コミュニケーション研修を提供しています。研修では観察力や身体的表現について聴覚障がい者の講師から気づきを得ることができます。また社内には聴者と聴覚障がい者が半数ずつの割合で働いていることからユニバーサルデザインを推進し、そのノウハウを聴者と聴覚障がい者が一緒に働く企業へコンサルティングを通じて届けています。

 NPO法人サイレントボイスでは、聴覚障がいのある子どもたちへの教育事業を行っています。大阪市内にある教室型の塾「デフアカデミー」には約150名の生徒が登録しています。一般的に聴覚障がいのある子どもは1000人に1人と言われており、支援環境は都市部に集中しています。支援環境のない地域にも支援を届けるためオンライン型の塾「サークルオー」を展開し全国に約70名の生徒がいます。また「耳が聞こえないためアルバイトを断られた」という大学生が先生として働く窓口にもなっています。

 このような聴覚障がいに特化した活動が評価され、2019年には大阪府障がい者雇用貢献企業「ハートフル企業チャレンジ応援賞」を受賞しました。

 さらにコロナ禍ではマスクで口元が見えず、コミュニケーションが取りづらくなったことで、不安定になった子どもたちが多くいました。そんな子どもたちを支援しようと、寄付やクラウドファンディングを活用しながら、出張教室やオンラインでの支援を無償で行ってきました。

 近年はIT機器の発達やメールやチャットで音声会話が減る傾向にあり、聴覚障がい者が働けるフィールドは広がっています。ところが、社会の偏見や当事者が夢をもてないといった課題があります。サイレントボイスさんは研修と教育の両方を通じて、このような課題と向き合うことで、聴覚障がい者が活躍できる社会を目指しています。


企業名株式会社サイレントボイス・ NPO法人サイレントボイス
HPhttps://silentvoice.co.jp/
事業内容法人は研修事業・コンサルティング事業、NPO法人は、ろう・難聴児向けの教育事業など