レポート

Case03株式会社美交工業

行政の福祉化を進めるにあたっては、障がい者や一人親やホームレスといった一般企業では雇用されにくい人たちの働く場をつくる視点が大切になってきます。営利だけを目的とするのでもなく、福祉的就労(就労継続支援A型・B型事業所、地域活動支援センターなど)でもない「中間的な職場=ソーシャルファーム」が注目されています。ここではさまざまなソーシャルファームの取り組みをレポートします。

障がい者やホームレスの雇用を進めただけでなく、公園を準公共ととらえ、府民がすごしやすい場所をつくってきた

 株式会社美交工業の主な業務は、ビルメンテナンスと公園管理事業です。公共施設の清掃業を中心に、就職困難者や障がい者が活躍できる環境を整備し、積極的に雇用しています。障がい者雇用のきっかけは2003年に大阪市が障がい者雇用を促進する「エル・チャレンジ」と連携したことでした。現在、従業員177人で、障がい者雇用率は21.85%(2021年11月現在)となっています。このような取り組みが認められた結果、2020年には障がい者雇用に関する優良な中小事業主に対する「もにす認定制度」を大阪で初めて取得しました。

 障がい者の受け入れにあたっては、ナチュラルサポートをするための専任支援者を現場に配置しています。現場では、個々の障がいに応じた柔軟な指導ができるようにしています。また、専任支援者の負担が軽減できるよう、本社には当事者や専任支援者が相談できる『はたらく応援室』を設け、企業内ジョブコーチを配置して、現場担当者だけで抱え込まない体制を作っています。このような働きやすい環境づくりの取り組みは、公園清掃でホームレスを雇用する際にも活かせました。

 さらに現在は、女性が働きやすい職場に送られる「えるぼし認定」(二つ星認定)や、子育てサポートを推進する職場として「くるみん認定」を取得するなど、誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでいます。

 また、障がい者雇用においては行政が求めることに応えようとする「会社のため」という視点で始めるうちに、知らず知らずのうちに「府民や市民のみなさんのため」にという視点が根付いてきたのかもしれません。美交さんは公園の指定管理者として、准公共という立場から、パブリックなサービスをどう叶えるか? という事業にも取り組んでいます。例えば、公園と周辺地域の歴史を掘り起こしたり、防災公園として初めてISO 22301認証という災害・非常時の事業継続マネジメント規格を取得したりしているそうです。


企業名株式会社美交工業
HPhttps://www.bikoh.biz/
事業内容清掃管理業務、警備業務、設備管理業務・環境衛生管理業務、管理サービス業務受付案内、案内管理業務など