行政の福祉化を進めるにあたっては、障がい者や一人親やホームレスといった一般企業では雇用されにくい人たちの働く場をつくる視点が大切になってきます。営利だけを目的とするのでもなく、福祉的就労(就労継続支援A型・B型事業所、地域活動支援センターなど)でもない「中間的な職場=ソーシャルファーム」が注目されています。ここではさまざまなソーシャルファームの取り組みをレポートします。
孤立しがちな盲ろう者が集い、働き、仲間と出会う場
NPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいるの主な事業は目と耳の両方に障がいのある「盲ろう者」を中心とした日中活動の場、憩いの場づくりです。設立は1999年と、全国的にも早い時期で、最初は日中活動を中心としたサークル的なものでした。その後、2001年にNPO法人化し、相談や通訳・介助といった支援活動を始めるようになりました。さらに、2007年には就労継続支援B型事業所となり、箱折やシール貼りといった軽作業を請け負うようになりました。2017年には全国で初めての盲ろう者専用のグループホームを開所し、盲ろう者が地域で生きていけるための場を提供しています。
現在盲ろう者は日本全国に約1万4000人おり、大阪府内には800~1000人いると見られています。ただ盲ろう者は一人での移動が難しく、支援が無いと他人とコミュニケーションが取りづらいといった特性ゆえ、社会の中で存在が把握されにくいという問題があります。また、「見えない」うえに「聞こえない」ため、一般就労が難しい面もあります。
そして昨今のコロナ禍では「社会的距離」を取ることが推奨されたため、盲ろう者支援に欠かせない「触れる」という行為に抵抗感を持つ人が多くなり、盲ろう者の孤立が問題となりました。障害者の中でも数が少ない盲ろう者にとって、同じ障害を持つ者が集い、活動したり働いたりしながら仲間づくりができる場はとても重要です。
さらに、盲ろう者の支援は一対一が基本で、触手話や指点字、手の平書き等特別な技術が必要とされることが多いため、慢性的な支援者不足が問題となっています。また、制度上B型活動中は通訳や介助が使えないといった問題もあります。
大阪府では毎年「盲ろう者向け通訳・介助員養成講座」を開催しており、すまいるは盲ろう講師を派遣しています。講座を修了し、一人でも多くの方が盲ろう者の理解者として活動してくれることを願ってやみません。
全国でもかなり早い時期に盲ろう者支援を始めたNPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいるですが、「ゆくゆくは同じような支援団体が全国に広がるように、モデルとなるような取り組みをしていければ」との考えのもと、盲ろう者が孤立せず、安心して生きていける社会を目指し日々活動しています。
企業名 | NPO法人 ヘレンケラー自立支援センターすまいる |
HP | http://db-smile.jp/access.html |
事業内容 | 盲ろう者のための総合支援(日中活動支援、就労継続支援B型事業、グループホーム運営)など |